いま、話したいこと。

日本マーケティング・プロデューサー協会から、友人への「手紙」。

 ---- この大不況の中、協会からの 《 提言 》に代えて ----
――君。「 この不況、消費不振の最短の克服を、先端のマーケッターは どう考えているのか。」という貴兄からの重要な手紙に、ぼくたちは以 下のように返信させて貰う。むろん言い足りない細かい件もあるので、 これをもとに、ぜひ討論させて貰いたい、と思っている。
大量生産・大量消費全盛的な工業化動向の行き詰まりが指摘されて、時代を進展させる今後への考え方だという「 産業社会再構築の必要 」が 指摘されて、もう結構、年月がたつよね。 しかし新世紀をまさに走り出した現在でも、新しい市場・社会のあり方 について、誰かが明瞭・具体的に示した状況とは、とうてい言いがたいし、また産業・環境の再構築や、それらの創造の方法でも、目に見える 指針が依然として遅れている、と誰でもが感じている。
確かにぼくたちは、いわゆるマーケティングの中核にたずさわる専門技能者として、この緊急課題にほんとうに取り組んできた。
新しい産業・社会のあり方とは。新しい市場と生活、そして消費がどう形成されて行くのか。いま日本が知らなければならないのは、間違いな くこの問題に他ならない、と当然、考えてきた。 そしてぼくたちは、いま、大量生産・大量消費の展開とはかなり別の視 点に立つ、「 21世紀のマーケティング 」の必要性が、どうしても不可 欠になっている、と判断している。
企業が経営として量産・大量消費の目標で「 教科書的手法を軸とした在 来のマーケティング 」の軌道を走ってきたのは、いわば素朴な体質でも あったわけだけれども、さてこの経済不振の暗い闇の中で、これからの 市場や社会をどう再創出するのか、その中心の命題を絶対に見失ってはらないね。
新時代のマーケットと活性社会を創り出す宿題と、これを担う専門技術 を考えると、 それは、いままでとは飛躍的に違う新しい思想と視点、と くに「 生活者としての人間性の心情の理解に立った、ある意味、科学と しての革新マーケティング 」でなくては、社会で成立しないだろう。
こう言うと君は、「 これまでの市場手法だって、生活者の需要を調査し て、ちゃんとマーチャンダイズをやってきた。現時点だって、そうだ。 」と反論するかも知れない。しかしそれが、似ていて、全然違う。
新しい形のマーケティングに要求されるいちばん基本的な視点を、もう 少し細かく言うと、それは「これまでより格段に、人間と生活のあり方 についての、冷徹な状況認識 」と、「 潜在的な今後生活目標への、正 確な判定力」、といえる。21世紀を展望して、「人間と生活との詳細な 潜在待望に対応する、明瞭な像として今後の市場・社会を構想する 」と いう議論なんだが、ちょっぴり難しい言い回しで失礼した。要するに、 標準としての日本人がこれからの生活の「 形 」をはっきりイメージでき る条件、それと、提案の手法の解明がいま求められている、と思う。
まだ、ややこしい言葉使いで、失敬した。もう少々、先へ進ませて貰う。
これからの時代は「 情報化社会である 」、という指摘が多いね。しか し情報々々と言ったって、情報が産業や生活社会にどういう利便でほんとに実現されるのか。最近のメディア評論では、ネットの利用や電算機 多用、といった表面的論議にとどまっている。
情報という生きる機能を介した、確固とした社会作りや市場構築 ( ネッ ト販売、イコール、今後の情報市場と思っていないだろうね ) が見えに くいのは、これからの人間と生活が、こうありたい、とする姿への「活 き活きした認識や理解」が欠落している、現時点の実情だから、だね。
何度も、今後生活の姿、という言い方をしているけれども、「 新しい 世紀のマーケティング 」の企画者は、《 これからの人間と生活の 提案 者 》でもなければならないだろう。同時に、こうした新理念の発信者は、 字義通り、「日本のマーケティング・プロデューサー 」であることを正 しく自覚する必要がある、とぼくらは思っている。
言葉の分かりにくさを怖れずに、もう少し核心に触れて行くと、課題の第1となる「 明日の日本人の生活の視点に立つ 」というスタート作業 は、単純にモノやサービスそれ自体に視点を置いて発想を始めるのじゃ なくて、地域社会のあり方や、今後の快適性とは何か、顧客が目ざす深 層志向、そして日本の社会と経済の行くえ、マーケットの活力を計測して初めてモノやサービスを構想したり、方向を選択したうえで育成するスタートボイントが必要となってくるのだ、と考えているわけなんだ。
この答えの1つとなるキイワードが、「 ほんもの、への接近 」ということなんだが、これまた誤解が多いボキャブラリなんで、ここでは省く。
第2には、最初から言っている通り、新時代の創造では、前の世紀からの大量生産・大量消費の枠の中で成立してきた産業活動のあり方を、「 新しい理解での仕組みに、根本的に再構築して行く過程 」が必要不 可避になっている状況がある、といえるね。
今後のマーケティングは、失礼ながらすでに、単純に営業企画部や販促担当の業務ではあり得ない、入り組んだ思想的な作業になっている現実が、まだほとんど理解されていない。新マーケット創造を原理的にも現実的にも成立させる「 企業と社会の、いわば存立形態への提言総合能力」とも言いたい、幅広い発想能力にまさに懸かっているのだが、と言うプロデューサーも居るほどだ。
第3の要件では、そうした新しい市場と社会を創り出すには、新しい環境と基盤(インフラストラクチャー)とを見抜いて、これを効果的な形で結合・化合させる構想力と行動力が強く求められるわけだ。
新しいマーケットを構想する時には、地域の中で生まれてきている新しい動機づけや、新しい価値観の人々、そして機能的な潜在ルールを発見して統合して行くと同時に、大きく言えば、地球的なレベルでの多様性と異質性を結合させる作業も、また不可欠となっているのが事実なんだ。
もう少し端的に言えば、新しい情報・物流のインフラストラクチャーから、新しいマインド ( 理念 ) を持ったペンチャー投資機構までも組み込んで、効果的に統合して新市場の醸成をはかる、ということまでも、実際には求められて行くだろう、という目標となる。
こうした点で、まさにいま、人間と生活の原点に立って、これからの市場・社会を創出しなければならない、という志と、そのための構想力 行動力、手法などを、高い水準で生み出す技能を発揮しよう、より多く持とう、というマーケティング・プロデューサー群がここに集まったわ けで、新しい明日へ共働することが不可欠なんだ、と信じている。
地域レベル、地球レベルでの日本人とその生活、または企業や組織などの、事実さまざまな場からの見えないメッセージや変化に柔軟な感受性を持つのと併行して、クリエイティブに提案し問いかけて行く、という点こそが、この瞬間に必要なマーケティング・プロデューサーの資質だといえるし、提供能力でなくてはいけない、と考えている。
こういう新世紀の技能者の先進プロデューサーを、ぼくらは仲間うちで、「 LCM( レイテント・コンストラクティブ・マーケティング――顧客の潜在感性と確実に交流し合って、創造的アイディアで提案展開する、これからの社会推進技術 ) プロデューサー 」、と呼び始めている。
同時にこの、ぼくたちの協会は、「 マーケティング・プロデュース 」という観点からの、産業育成、地域振興、環境創造などについても政策提言能力のあるシンクタンク機能として、すでに活動を拡大していて、これからいっそう大きな役割を果たして行くことを、はっきりとした目 標にしている。まずは、ここまでを理解してほしい。